金曜日の夕方、動揺のまま学校に電話をかけた。
あのときの私は、とても冷静とはいえなかった。けれど「この週末を不安のまま過ごすのはつらい」と思い、受話器を握った。

電話口に出たのは学校の先生。私は学年とクラス、子どもの名前を伝え、
「息子が先生にビンタをされたと言っています。事実かどうかを確認したい」
とだけ告げた。
担任には直接つながないほうがいいかもしれないと思い、あえてそうした。感情的にぶつかってしまいそうで怖かったのだ。

数分後、すぐに折り返しの電話が鳴った。
そしてなんと、当事者本人が、私が話すことと上のものが話す内容は一緒なのでと言って話すことになってしまった。

思わぬ形でB先生と直接つながった。

最初に電話してきたのは、電話に最初に出た先生だった。
このときの声や内容は、比較的冷静に聞き取れた。
「折り返しにします」と言われた瞬間、数分の間だけど気持ちを落ち着ける時間ができた。
クールダウン、クールダウン――。
少しでも心を整える時間があることが、こんなに大事だとそのとき初めて感じた。

だが、その折り返しの中で「B先生(息子をたたいたとされる先生)に代わります」と言われたのか、はっきり記憶がない。
気づけば、突然B先生の声が受話器から流れ込んできた。

B先生は、開口一番すごい勢いで話し出した。

「わたしとお母さんの関係なら、私が直接お話したほうがいいと思って……。
今日は絵を描く授業で、下書きをしていたんです。息子くんは一生懸命描いていて、とてもきれいに描いていました。私も指導に熱が入ってしまって……。途中で下書きがうまくいかなくなって、せっかくきれいに描けていた下書きに大きなバツをつけてしまったんです。息子くんはこだわりが強くて、0か100みたいなところがあるじゃないですか。私もつい頑張ってほしくて……励ますつもりで頬を『がんばれ!』ってやったかもしれません。」

私は思わず聞いた。

「それは、叩いたということですよね?」

先生は少し言いよどんでから答えた。

「やったかやってないかと言われたら……やったかもしれません。叩いたということなのかもしれません。」

――覚えてるの?覚えてないの?
なんだかはっきりしない言い方に、逃げ道を探しているような印象を受けてしまった。
でも少なくとも、息子の話は勘違いではなさそうだという確信が強くなっていった。

事実を知りたいのに、話がかみ合わない

私は「うやむやにされたくない」という気持ちがどんどん強くなった。
事実を確認したいだけなのに、話はすり抜けていく。

「別の先生からも話を聞きたいです」と伝えた。
しかし返ってきたのは、

「別の先生から聞いても、今お伝えしたことがすべてです」
という答え。

それでも食い下がると、しぶしぶ別の先生に代わってくれた。
だがその先生も、

「今、B先生から聞いたばかりなので、これ以上のことは……。すみません。今後このようなことがないようにします」
と、すぐに謝罪のトーンになってしまった。

ちがう。私が聞きたいのは謝罪じゃない。まず事実だ。息子に何があったのか、それを知りたいんだ――。

最後には担任の先生にも代わってもらった。
けれどもやはり、核心をついた答えは得られなかった。
この時点で私は、学校とどう話を進めるべきか、完全に手探りの状態だった。

登場人物をここで整理しておきたい

ここまで読んで、気づいた方もいるかもしれない。
息子をたたいたのは、担任の先生ではなかった。

今回登場している先生は次の3人だ。

B先生 … 息子をたたいた教科担任の先生。

担任の先生 … 息子の学級担任。日常的にクラスを見ているが、この授業には同席していなかった。

電話に最初に出た先生 … 最初に学校の電話を取って対応し、折り返しを手配してくれた先生。

つまり、問題が起きた授業は担任の目が届かない時間に行われていた。
だから担任が知らなかったのかと思うかもしれないが、実際にはそうではなかった。
授業のあと、「息子がB先生にビンタされた」という話はクラス内でうわさになっていたという。
担任もその情報を耳にしていたのだ。

ではなぜ、保護者である私には何も伝えられなかったのか。
担任は息子に「大丈夫か?」とだけ声をかけ、息子が「大丈夫」と答えたことで終わってしまっていた。
叩かれた事情を確認することも、保護者に連絡を入れることもなかった。

この点は、学校が子どもの「大丈夫」をどう受け止めているのか、そして保護者との情報共有をどのように考えているのかを問いたくなる出来事だった。

次回につなぐ学び

この日のやりとりで痛感したのは、「想定外の展開に備えて、話したいことを整理しておくこと」だ。
折り返しの間のわずかなクールダウンがなければ、さらに混乱していたかもしれない。
でもそれでも、十分に準備できていなかったことを悔やんだ。
感情が揺れると、冷静に事実確認するのは本当に難しい。

そして同時に、学校の情報伝達や判断のあり方にも大きな疑問が残った。



私の失敗や戸惑いが、同じ状況に立つかもしれない誰かの助けになればと願っている。

ABOUT ME
みかん
子育て中の母親。みかんが好き。子どもが学校で受けた体罰をきっかけに、ひとりの親として経験したことを記録しています。「学校と戦わない姿勢」を心がけていますが、気持ちは常に戦っています。日々は穏やかなのが一番。