学校への最初の一報
ママ友から「ねえ、○○くん、先生に叩かれたって聞いたんだけど…大丈夫だった?」と声をかけられたのは、ある平日の午後であった。
息子が先生からビンタを受けたという話など一度も聞いていない。頭の中が一瞬で真っ白になった。私はそのまま帰宅し、動揺を抱えながら息子に尋ねた。
「夏休み前に先生と何かあった?」
息子はしばらく黙り込んだ後、うつむいたまま言った。
「……ビンタされた」
その瞬間、胸が大きく揺れた。驚きと怒り、そしてなぜ気づいてやれなかったのかという後悔が押し寄せた。息子は「心配かけたくなかったから」と話した。健気さが痛かった。
迷いながらも電話を取った
時刻はすでに16時を過ぎていた。金曜日。週末にこのまま持ち越すのがどうしても嫌だった。学校の電話がつながるのは17時半まで。迷っている時間はなかった。
冷静ではなかったと思う。ただ、手にはその場にあった紙とボールペンを握りしめていた。
あとから思えば、まずメールを送って記録を残すとか、誰かにそばにいてもらうとか、録音をしておくという方法もあっただろう。しかし、そのときの私は、とにかく今すぐ動かねばという気持ちでいっぱいだった。
電話口で
学校に電話をかけると、最初に出たのは事務の先生だった。私は担任に直接つなぐことを避けたかった。もし担任にいきなり話してしまったら、事実が隠されてしまうのではないかという恐れがあったからだ。
「○年○組○○(子の名前)の保護者です。息子から、夏休み前に先生にビンタをされたと聞きました。そのようなことがあったのか確認してほしいです。これまで学校からはこの件について連絡を受けていません。今日ではなく夏休み前のことだと聞いています。電話がつながる時間内に、実際にあったことなのかを確認して折り返しをいただきたいです。」
そう、はっきりと伝えた。
あのときの私は、声が震えていたかもしれない。それでも、伝えるべきことだけは必死に言葉にした。
予想外の折り返し
10分も待たないうちに学校から電話がかかってきた。
応対した先生に、私は改めて「できれば当事者ではなく、事情を聞き取った先生から話を聞きたい」と伝えた。
しかし、次に電話口に出たのは――まさに息子を叩いた当事者の先生であった。
思わず言葉を失った。まさかいきなり本人と話すことになるとは想像していなかったからである。心の準備もないまま、対話が始まってしまった。
(この続きは次の記事に書く予定である。)
後から振り返って思うこと
今思えば、もっと冷静に準備をしてから連絡をすべきだったのかもしれない。
メールでまず記録を残しておく、誰かに同席してもらう、会話を録音する――そんな方法があったと後になって気づいた。
しかしあの時の私は、ただ息子を守りたいという気持ちと「今、動かないと何も変わらない」という衝動に突き動かされていた。金曜の夕方、時間のリミットも意識していた。あの状況では、これが精一杯だったのだと思う。
この体験は、私にとって「学校と戦わない戦い方」を模索し始めるきっかけのひとつになった。

